お前、今のあいつのこと見てどう思う
204話 「闘争鎮火の新たな湖都で」【後編】商家――服飾店に入ってからわずか三分,ヴィトン タイガ。
入ってから騒がしくあたりを駆け回り始めたイリアをとっつかまえ、脇に抱えながら、クシナは大きなため息を吐いていた。
――なんで俺がお守みたいになってやがんだ……。
子どもは苦手だ。
イリアはときおりやたらと大人びた風にもなるが、やはり基本的には元気いっぱいの子どもという感じである。
そしてこの場に身内は自分とシオニーしかいない。
しかしそのシオニーが、
「俺さ、最近あいつが不憫に思えてきたんだ。これって結構末期だよな」
服飾店の店員になにやら耳元でささやかれながら、ときおり「ふおっ！」やら「本当かっ,see by chloe!?」などと感嘆の声をあげている。
遠目から見てもよくわかる,クロエ バック。
――あれ、カモられてるだろ……。
しかもおそらく一度や二度ではないはずだ。
シオニーが店に入った瞬間に、数人の店員の目がギラついたのをクシナは殺気とばかりに勘付いていた。
常連だ,ポールスミス 財布。
あれはカモられる常連だ。
確実にやつの財布はこの服飾店を繁盛させるのに一役買っている,MCM 日本。
むしろ一役で済めばいい方だ。
「なあ、イリア。お前、今のあいつのこと見てどう思う？」
「……カモ,HERMES bag？」
よし、確実だ。
自分のフィルターで変な風に見えていたわけではないようだ,Paul Smith 時計。
純粋なイリアのお墨付きがあれば間違いない。
「どうすっかなあ……、止めんのもめんどくせえなあ……」
財布は一応各自が持っている,MCM 新作。
お小遣い制だ。
だからシオニーの財布が軽くなろうが知ったことではないのだが、ほんの少し、ちょっぴりだけ、善意なるものが胸のうちで渦巻いている。
でも、
「目の輝き方が尋常じゃないんだよなあ……」
加えて、銀色の尻尾がここぞとばかりに左右に激しく振られている。
あれはもうカモってくださいという合図だ。
これだから有尾種は注意が必要なのだ。
特に犬系,ボッテガ 長財布。
やつらの尻尾はわかりやすい。
「やめろっていっても噛みつかれそうだ」
クシナはそんな予想を得た。
しかし、徐々にシオニーの両手に乗せられていく下着類が多くなっていって、思わずクシナはイリアを脇に抱えたまま近づいてしまっていた。
「おい――」
そんな下着ばっかり買ってどうするんだよ,MCM 財布。
そう言うつもりだった。
しかし、
「う、うわぁ……」
振り向いたシオニーの口角から、わずかばかりよだれが垂れている。
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